プロジェクトマネジメントを楽にする為の「境界線」

 

今回書いていること

  • 境界線とは?どうしてプロジェクトマネジメントに大切なのか?
  • プロジェクトマネジメントに「責任を取れ」は通用しない
  • スケジュール遅延を防ぐ3つの施策

境界線とは?どうしてプロジェクトマネジメントに大切なのか?

境界線とは、物理的には柵, 看板, 壁, 堀, 池垣などの個人が権利証書で保有している土地を目に見える形で仕切るものです。境界線によってどこまでが所有地で、誰が管理責任者が分かり、土地に用件がある場合誰に伝えればすぐに分かります。

そして、目に見えないかたちでも、何が自分の責任範囲かを示し、何が自分の責任範囲にないかを明確にすることで境界線を仕切る必要があります。たとえば「この土地をしっかり守りなさい。ここで何か問題が起きたらあなたの責任を問います」と言われても、もし土地の境界線が分からなかったらとても危険な立場に立つことになります。

そして、プロジェクトマネジメントは頻繁に二つの問題にぶつかります。

  • プロジェクトの境界線があいまい(関係者でプロジェクトのスコープが違う)
  • プロジェクトの境界線が軽視される(誰かがスコープ/スケジュールを守らない)

目に見えない境界線は、他者に対する責任と自分自身に対する責任を切り分けるとも言えます。独りで抱えきれない重荷は互いに助け合うべきです。独りで持ち運びできる荷物は独りで抱えるべきです。

しかし、独りで抱えきれない重荷を助けない時、独りで持ち運びできる荷物を運ばない時、見えない境界線で問題が発生します。たとえば、自分では解決できない問題を誰かが気が付いてくれるまで言わない。努力すれば解決できるはずの問題をやらない(大抵は”時間がかかる”、”解決には他者の協力が必要だが連絡していない”、”そもそも、別に終わらせなくても誰も困らないと思っている”などが原因です)。

これらはプロジェクトにおいて頻繁に発生します。

プロジェクトマネージャーは定義上「プロジェクトの目的, 目標を期日までに完了させること」に責任を負っています。これはとても酷な役割だと思います。プロジェクトの関係者とその仕事によって成り立つプロジェクトを「期日までに完了させること」とは、プロジェクトの全ての責任を取れと言われていると同義です。エンジニアからプロジェクトマネージャーにならず、エンジニアのままスペシャリストを目指す人がいるのも理解できます。プロジェクトマネージャーになることによって責任範囲が広くかつ曖昧になります。

プロジェクトマネジメントに「責任を取れ」は通用しない

 

「人は種を蒔けば、その刈り取りもすることになる」という言葉があります。タバコを吸えば、肺がんになるかもしれない。お金を使い過ぎれば、債権者から電話がかかってくる。定期的に運動すれば、風邪を引きにくくなる。予算を立てれば、請求書が来ても支払いできる。人は自分の行いに対して、その刈り取るも自分で行うことになります。

しかし時に本来自分が刈り取るべき結果を、他の誰かが横から刈り取ってしまう場合があります。いつまでも親のクレジットカードを使えたら、たとえお金を沢山使っても困ることはありません。もし親と子供の関係、友人同士で起きた問題ならば、無責任によって発生した事態を相手に取らせることができます。問題が起きる前にも後にも、敢えて相手を助けないことで身をもって知って貰うことができます。

しかし、仕事では相手の無責任さから発生した更なる問題を、当本人に取らせることは困難です。

たとえメンバーの業務が遅れて全体スケジュールに影響が出るとしても、「責任を取れ」と言ったところでそのメンバーが自ら新しく追加のリソースをもってくることはできません。追加リソースの確保はあくまでプロジェクトマネージャーや部門長に権限があります。メンバーからクライアントに説明することはできず、クライアントへの説明責任にはあくまでプロジェクトマネージャーにあります。

ですので、もしプロジェクト内に無責任な人がいたら、プロジェクトマネージャーは知らないうちに事実上の連帯保証人になっている状態です。

スケジュール遅延を防ぐ3つの施策

そこで、プロジェクトマネージャーが行うべき対策は3点あげます。

1.MTGでもメッセージでも良いので、責任を果たさないことがどのような事態を引き起こすかを早く説明する

「このままではプロジェクトが遅れます。クライアントが怒ります。私はその責任をとりますが、ありのままを説明するしかありません、つまりあなたの業務が原因であること」と伝えるべきです。そして、この説明はできるだけ早く、できればスケジュールが少しでも遅れる前に伝えるべきです。

2.相手のレベルに合わせてモニタリングを行う

そして、メンバーのスキルと責任感に応じたモニタリングを行うべきです。スキルがありスケジュールへのコミット実績があるメンバーは殆ど放置でも構いません。スキルはあるがスケジュールへのコミットが弱いメンバーは、不定期なメッセージで状況確認しましょう。もしスケジュールへのコミットメントが弱く遅延を繰り返すメンバーがいる場合、15分でも良いのでデイリーで1on1を実施するべきです。

1on1では状況確認を行い、今何か問題があるか確認し、そして再度本当に全ての問題を話してくれたか念押しで確認しましょう。”本当に全てを話してくれているか”、”他に何も胸にしまっていないか”を確認することが大切です。

3.上記を行っても相手に改善の傾向が見えない場合、相手の上長と話す

上記の1,2を行っても状況が良くならない場合、相手の上長と話しましょう。自分が上長ならば更に上の上長と話しましょう。話す目的は文句を言うことや告げ口することではありません。相手との間で起きている問題、プロジェクトへの影響を伝えてどうすれば解決するかアドバイスを貰うことです。そして必要があれば上司からも相手に話して貰いましょう。

結び

プロジェクトマネージャーという仕事は、定型化するのが難しい仕事です。コーディングのように正しく書けば必ず正しく動くとは限りません。しかし、その中でもよく起こる問題とその対策をパターン化することはできると思います。

今回は境界線という考え方をベースに、プロジェクト内のタスクが遅延するというほぼ確実に起きる問題に対して、
1.責任を果たさないことがどのような事態を引き起こすかを早く説明する
2.相手のレベルに合わせてモニタリングを行う
3.上記を行っても相手に改善の傾向が見えない場合、相手の上長と話す
を説明しました。

個人の失敗経験から思うことは、ちょっとでも”あの人はスケジュールに緩いから気をつけてね”という噂がある人に仕事をお願いする場合、最初にNo.1に近い”もしスケジュールに遅れたらどうなるか”の説明を推奨します。

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