パーキンソンの法則は、イギリス人のパーキンソンさんが提唱した法則です。
- 役人は部下を増やすこと望む。しかしながら、ライバルは望まない
- 役人は互いの為に仕事をつくり合う
パーキンソンさんはイギリスの官僚制を調査して上記の法則を提唱しました。実力主義が推奨される現代においても社員数が多い大企業にはあてはまる法則だと思います。今回はパーキンソンの法則をまとめ、「なぜ仕事は増え続けるのか?」について考えたいと思います。
役人は部下を増やすことを望む。しかしながら、ライバルは望まない
とある役人Aさんは自分の仕事が多すぎると判断し、同僚のBさんに依頼するか、部下のCさん,Dさんのどちらに振るか悩みます。
もし同僚のBさんに引継ぎしてしまうと、自分たちの上司Zさんが退職するときに後任候補のライバルになってしまうから辞めます。
もし部下のCさんだけに引継ぎするとCさんが自分と同列のようになるから、CさんとDさんの二人に役割をわけることにしました。
仕事をCさんに仕事を振り続ければCさんの業務が増える為、サポートする為にEさん,Fさんをつけてあげることにします。
ただし、面倒な摩擦を防ぐために、同じようにDさんにもHさん,Gさんをつけてあげることにします。
そんなこんなで自分配下の人が増えると、管理するAさんの役職が上がります。
では実際に、最近起きたシステムトラブルの始末書を振ってみましょう。まずEさんが始末書の下書きを書いてCに提出します。CさんはDさんへ相談する前に下書きを大幅修正しました。Dさんは始末書業務をシステムに強いGさんに委任しています。しかし、Gさんはリリースオペレーションで手があかない為、代わりにHさんへ渡します。Hさんは下書きを更に修正してDさんに渡します。DさんはサインをしてようやくAさんに渡すことができました。
Aさんは貰った始末書を読み、不要だと思う部分を削り一部を修正しました。結果として、最初にFさんが作った状態に近い始末書になりました。
果たして一連のプロセスは必要だったのでしょうか。。。
ちなみに始末書が来るまでの間にAさんは、Zさんからの引継ぎ準備をしつつ、自分の後任はCさんとDさんのどちらが適切か検討し、出向させるべきはGさんかHさんかで悩み、Fさんの休日手当手続きを行い、Eの転勤希望を検討しています。人が増えてしまったから、やることも増えてしまいました。
役人は互いの為に仕事をつくり合う
パーキンソンさんはイギリス海軍は人員数と戦艦の総トン数を比較しました。1914年に海軍兵数は14万6千、主力艦は62、労務者は5万7千です。労務者とはロンドンの海軍省に勤める事務員のことを意味します。世界的な軍縮によって1928年に海軍兵数は10万まで削減、主力艦も20まで削減されました。しかし、労務者は6万2千に増えています。
年 | 兵数 | 主力艦 | 労務者 |
---|---|---|---|
1914年 | 14万6千人 | 62トン | 5万7千人 |
1928年 | 10万人 | 20トン | 6万2千人 |
主力艦も実際に戦争する人員も減ったのに、労務者は増えています。
同じことが植民地省でも起きていました。1935年から1939年は植民地の人口も領土も変わりませんが、1943年頃に戦争で植民地を失い、1947年頃に取り戻すものの植民地自体の独立によって減少しています。植民地の人口と土地が減るにしたがって、管理する植民地省の人員も減るべきですが、実際は違いました。
年 | 植民地省の人数 |
---|---|
1935年 | 372人 |
1939年 | 450人 |
1943年 | 817人 |
1947年 | 1139人 |
1954年 | 1661人 |
年が変わるほどに植民地省の人数が増えています。人が増えるほどに、書類を確認する人数と人時も増えていきます。
まとめ
パーキンソンの法則は、現代にも当てはまる洞察だと思います。人が増えるほどに業務が増え、実務者は少なくてマネージャーが多い。そのような状況は現代にも十分当てはまるのではないでしょうか?私はパーキンソンの法則を見ながら、自社に起きている様々な組織構造や作業を思い起こしました。「人が増えれば業務が増える」果たして、冒頭のAさんは書類作成をCさんに一人だけに任せてしまうべきだったかもしれません。